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創作・同人誌制作
2020.09.21

【初心者向け】同人誌・漫画のデザインにおすすめの本11選

最近、「独学でどのような本を読み、デザインを勉強していますか?」とご質問いただくことがちらほらでてきました。

同人誌の装丁をもっとおしゃれにしたい!
小説本の組版をもっと綺麗にみせたい!

そう思ったとき、私は美大に通っていたわけでもデザインスクールに通っていたわけでもなかったので、自分で本を読んだり観察したり手を動かしたりを繰り返すしかありませんでした。

この記事では、私が独学で実際に買って学んだ、おすすめのデザイン周り書籍を11冊紹介していきます。

①なるほどデザイン

私自身は、恥ずかしながら「どこから勉強すればいいの…?」レベルの状態から独学がスタートしました。
よって、デザインの理論や基礎基本について詳しく説明した記事をいきなり読んで理解することが難しい状況でした。。

そこで、まずは取っ付きやすそうで「パッと目で見て違いや狙いがわかる」ような本を買いたいと思い、手に取ったのが『なるほどデザイン』でした。

デザインとは何か? どのように実践していくのか?

について、詳しく触れた本では個人的にはないと思います。

一方で、図やイラストが豊富で、フルカラーでわかりやすい説明に終始されています。
わかりやすい図解や例示を見ながら、デザインの基本となる考え方や、構図や色の選び方を学ぶことが可能です。

よって、まずは目で見て「なるほど」とデザインの違いや効果を楽しみながら基礎を知り、デザインに対するモチベーションを上げるためにはおすすめの一冊です。

②ノンデザイナーズ・デザインブック

『ノンデザイナーズ・デザインブック』は、デザインの4原則について、実例を用いて詳しく解説した本です。

デザインの4原則とは、「近接」「整列」「反復」「対比」で構成されるルールです。
この原則を守ってデザインを行うと、伝えたい情報をわかりやすく伝えることができるとされています。

書籍内では、名刺の例からWebサイトの例まで、この4原則をあてはめたデザイン例を学ぶことができます。
ほかにも、カーニング(文字詰め)や書体の種類についても学ぶことができ、デザインの基礎基本が実例つきで丁寧に解説されています。

やや難があるポイントを挙げるとすれば、原書が英語のため、翻訳にやや違和感を感じる部分があることと、デザインの実例が英語のものがほとんどのため、少しイメージしにくい部分があることかなと思います。

とはいえ、この本を読めば、デザインの基礎基本となる4原則について丁寧に学習できます。

デザインを感覚的に語るのではなく論理的に説明できるようになりたい方や、デザインを始めているものの、デザインの4原則を知らなかった方にはおすすめの1冊です。

③センスは知識からはじまる

『センスは知識からはじまる』は、「センスは知識の積み重ねにより磨くことができる」と説いている本です。

デザインに興味を持ち始めたばかりの頃、周りのデザイナーさんたちのデザインを見ては、「こんなデザインをしてみたいな、センスがいいな」と感じていました。

一方で、「じゃあセンスってなんだろう? どうやって磨くことができるんだろう?」と疑問に思った時、出会ったのがこの本でした。

センスとは知識の集積である。これが僕の考えです。

引用:『センスは知識からはじまる』

と書籍内で述べられており、センスとは「知ること」の積み重ねであると説かれています。

また、

「センスのよさ」とは、数値化できない事象のよし悪しを判断し、最適化する能力である。これが僕のセンスについての定義です。
おしゃれもかっこよさもかわいらしさも、数値化できません。
しかしそのシーン、そのとき一緒にいる人、自分の個性に合わせて服装のよし悪しを判断し、最適化することはできます。それを「かっこいい、センスがいい」と言うのです。

引用:『センスは知識からはじまる』

とも述べられており、「センスって何?」「センスの良さとは?」といった疑問が解消されていきました。

それだけでなく、

  1. 王道から解いていくこと
  2. 今流行しているものを知ること
  3. 「共通項」や「一定のルール」がないかを考えてみること

これら3つを抑えることで、効率的に知識を増やすことができると方法論も具体例として丁寧に説明されています。
この本を読んで、「自分でもセンスを磨くことはできるんだ」と小さく確かな自信がつきました。

デザインに興味はあるけれど、自分にはセンスがないし……。

と悩んでいる方や、

センスってなんだろう? どうしたら磨くことができるんだろう?

と疑問に思っている方にはおすすめの1冊です。

④色の事典

『色の事典』は、彩度や明度、色相など、色の基礎知識を学べる本です。

色の選び方がよくわからず、なんとなくで選ぶ状態をやめたかったときに見つけたのがこの本でした。

  1. 色の基礎知識
  2. 配色のルール
  3. 色の効果
  4. 色のイメージ
  5. 生活空間と色

と、5つの章に分かれており、色にまつわる基礎基本を知ることができます。

色彩設計について詳しい方にとっては当たり前のことが書いてあり、物足りなく感じるかもしれません。

一方で、これから色彩について学びたい、よくわからないという方には初めの1冊におすすめです。

⑤同人誌のデザイン

『同人誌のデザイン』は、同人誌デザインにまつわる基礎知識から発行事例まで詰め込まれた、フルカラーで楽しめる同人誌づくりに役立つ本です。

普段同人誌のデザインアイデアはPinterestやTumblerで収集することが多く、同人誌に特化した書籍がないものかなと思っていたとき出会ったのがこの本でした。

書籍内は、

  1. PART1:デザインの基本
  2. PART2:印刷・加工の基本とアイデア
  3. PART3:デザイン実例集

の3パートに分かれています。

PART1のデザインの基本では、レイアウトの考え方やフォントの書類、よく同人誌のデザインで見かける文字が一部切れたデザインの作り方など、同人誌のデザインにチャレンジするための基礎基本情報がまとまっています

PART2では、しまや出版さんご協力のもと、PP加工や箔押しなど、同人誌でおなじみの特殊装丁について実例付きで紹介されています。

PART3では、実際に発行された同人誌の事例がいくつか掲載されており、各デザインがどのサイズで何の紙を使ってつくられたかなど、イメージと仕様を知ることができます

一方で、

じゃあどうやってこのデザインを作るのか?

といった部分には触れられていないので、その辺りの再現方法はデザインを見ながら自分でツールを用いながら考える必要があります。

とはいえ、基礎知識を得たり、実際に発行された同人誌の事例を見て楽しむことを目的として購入される分にはとても楽しく読める本です。

はじめて同人誌をつくる方や、自分がいつもつくっている同人誌に少し何か加えられるようなアイデアの種を求めている方におすすめの1冊です。

⑥新しいコミックスのデザイン。

『新しいコミックスのデザイン。』は、その名の通り「コミック」のデザインについて事例がまとめられた本です。

冒頭では「架空のコミックスデザイン」として、現役デザイナーさんの手で実際にデザインができあがっていくまでの過程を見ることができます。

ラフからレイアウト案、作字ラフやインタビューもついているので、デザインの過程が気になる方には満足のボリューム感だと思います。

以降は事例集として、

  • Cute
  • Pop
  • Stylish
  • Natural

と4カテゴリで漫画装丁が集められ、それぞれ使用フォントや装丁から受けるイメージが実例と共に説明されています。

具体的には、『ポプテピピック』や『五等分の花嫁』、『恋は雨上がりのように』など、40種以上の漫画装丁事例が集まっています。

デザイナーさんの漫画デザイン工程が知りたい、装丁の事例をまとめて見たい、という方にはおすすめの1冊です。

⑦入稿データのつくりかた CMYK4色印刷・特色2色印刷・名刺・ハガキ・同人誌・グッズ類

『入稿データのつくりかた CMYK4色印刷・特色2色印刷・名刺・ハガキ・同人誌・グッズ類』は、印刷にまつわるデータづくりの解説本です。

データづくりに少し慣れてきた頃、基礎基本からしっかり学びたいと思っていたとき出会ったのがこの本でした。

書籍内ではカラーモードや解像度などの入稿データ作成に必要な基礎知識から、オーバープリントやリッチブラックなどのデータ作りのTIPS、PhotoshopやInDesignでの入稿についてまで、丁寧に解説されています。

踏み込んで丁寧に解説されている分、編集ソフトやデータ作成について予備知識がある程度必要な印象を受けました。

よって、一度も入稿データを作ったことがない人向けというよりは、自分で何度かIllustratorなどのソフトを使って入稿を経験したことのある方向けの印象です。

とはいえ、フルカラーで図解が多く、わかりやすい誌面になっているので、初心者の方で印刷データの作り方について基礎基本から陥りがちなミスのポイントまで知っておきたい、という方にもおすすめできる1冊です。

⑧特殊印刷・加工事典

『特殊印刷・加工事典』は、その名の通り、特殊印刷・加工事例が豊富に掲載されている本です。

特殊装丁や加工について、ある程度網羅的にまとまっていて、かつ実物画像がしっかり載っている本がないかなと思っていた時出会ったのがこの本でした。

書籍内では、

  • 特殊印刷・加工(PP・ニス引き・蓄光印刷等)
  • 押し加工・抜き加工・折り加工
  • 活字・活版印刷
  • 特殊な印刷加工(フロッキー印刷等)
  • 特殊紙
  • 特殊印刷・加工のためのデータ制作

など、章ごとに特殊加工で知りたいあれこれが豊富な事例付きで紹介されています。

加工紹介ページでは、加工の特徴・実例写真のほか、レーダーチャートもついており、

  • 耐久性
  • 対光性
  • 精細さ
  • 環境性
  • コスト
  • 時間

の6ポイントから特殊加工について理解することができます。

特殊紙を紹介するページでは、「ヴァンヌーボ」や「パチカ」、「スタードリーム」といった同人誌制作でもおなじみの憧れ用紙が実例と共に説明されており、こんな装丁でこの用紙を使ってみたい! という気持ちが高まる構成となっています。

同人誌をつくる方で、特殊装丁に興味のある方には確実におすすめしたい1冊です。

⑨MdN EXTRA Vol.1

『MdN EXTRA Vol.1』は、漫画とアニメのグラフィックデザインについてフォーカスし、過去のMdN人気特集を再収録した本です。

キルラキルや魔法少女まどか☆マギカなどのグラフィックデザインの裏側や、漫画のタイトルデザインから少女漫画のカバーデザインについてかなり詳しく特集が組まれています
上記のうち、どれかひとつでも気になるトピックがある方は買って損はない一冊です。

人気特集が再収録されているだけあって、どの特集も骨太でボリューミーかつレイアウトもわかりやすく楽しく、それらが140ページを超えるボリュームでまとめられています。

アオハライドのロゴパターンが見られたり、インタビューの中ではコミック百合姫の表紙デザインの狙いなども知ることができたりと、漫画やアニメのデザインに興味がある方には自信を持っておすすめできる一冊です。

⑩MdN EXTRA Vol.2

『MdN EXTRA Vol.2』は、漫画とアニメのグラフィックデザインの中でも「タイポグラフィ」にフォーカスして特集が組まれた本です。

アルドノア・ゼロやペルソナ3等のタイポグラフィについてデザイナーさんのインタビュー付きでデザインの意図がまとめられているだけでなく、「アニメのタイトルデザイン」のページでは、ピンポンや言の葉の庭、コードギアス 亡国のアギトなどのアニメのタイトルロゴの使用フォントや作字意図を知ることができます

他にも、「好きな書体」について10名以上のデザイナーさんにアンケートを取られたページなどもあります。

『MdN EXTRA Vol.1』とあわせて、漫画やアニメのデザインに興味がある方にはぜひおすすめしたい一冊です。

⑪レタースペーシング タイポグラフィにおける文字間調整の考え方

『レタースペーシング タイポグラフィにおける文字間調整の考え方』は、「レタースペーシング(文字間調整)」にフォーカスして解説している本です。

デザインを学ぶうちに、次第に掴めてくる文字間隔の調整のニュアンス。
大文字や小文字の文字間調整時に気をつけるべきことや、客観視のコツまで、具体的な方法論が紹介されています。

書籍内は、

  1. なぜスペーシングが重要なのかを理解し、どのように字間を見ていけば良いかを解説する赤エリア
  2. より理解を深めるため、和文と欧文ごとの文字間調整の特徴を学ぶ緑エリア
  3. 実例に触れたり実践したりすることで、これまでの学習を自分の感覚へと落とし込む青エリア

の3段構成で成り立っています。

専門用語がでてくるなら読むのをためらってしまう……。
という方でも、書籍冒頭にとてもわかりやすい用語解説集もついているので安心して学べます。

レタースペーシングを論理的に、図解ありでわかりやすく学びたい時におすすめの一冊です。

まとめ

ここまで、主に同人誌のデザインをするために、独学でデザインを学ぶ際おすすめの本をまとめてきました。

どの本もおすすめできる本ばかりですが、実際は本を読んだだけでデザインがうまくなることはなく、情報をインプットしたら手を動かしてアウトプットする必要があります。

とはいえ、良質なインプットがアウトプットの質を決めることも確かです。
気になる本が1冊でもありましたらぜひお手にとっていただき、デザイン学習に少しでも役立てていただけたら嬉しいです!

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welca

welca

Fare.(ファーレ)編集長。デザインが好きな文字書き。小説を書きながら同人誌のデザインをしたり雑誌を作ったり、Webメディアを運営したりしています。創作を通して、同人の世界をもっとおもしろくすることが夢です。